外国人技能実習制度と特定技能に係る制度の違いとは?

外国人の受入れを検討中の企業様にとっては、「外国人技能実習制度」と「特定技能に係る制度」の違いはどこにあるのか?や、「特定技能に係る制度」については企業様にとってのメリット・デメリットはどのようなことがあるのか?とお思いのことと存じますので、その他含め、2つの制度の違いや特徴を詳しく紹介していきます。

押さえておくべき制度の大きな違い

各制度の目的とは?

まず各制度の目的から確認していきましょう。

「外国人技能実習制度」は、「日本で培われた技能等を開発途上地域等へ移転することを図り経済の発展を担う”人づくり”に協力することを目的とする制度」です。

一方、「特定技能に係る制度」は、「中小企業・個人事業主をはじめとした深刻化する人手不足に対応するため、生産性の向上や国内人材の確保のための取組を行ってもなお人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野において、一定の専門性・技能を有した即戦力となる外国人に、”特定技能”という在留資格を付与して受け入れていくもの」となります。

つまり、前者は「開発途上地域への国際貢献」、後者は「人手不足が深刻な分野での解消の一端を担う」ということになります。

就業可能な職種や期間

「外国人技能実習制度」と「特定技能に係る制度」では、各制度の目的により就業可能な職種が異なります。2021年9月現在、技能実習2号へ移行可能な対象が85職種156作業であるのに対し、在留資格”特定技能1号”での活動は、人材不足が深刻な14分野に限られます(在留資格”特定技能2号”では2分野のみ)。

≪ 在留資格「特定技能1号」≫

在留資格「特定技能1号」職種一覧

≪ 在留資格「特定技能1号」≫

①介護 ②ビルクリーニング ③素形材産業 ④産業機械製造業 ⑤電気・電子情報関連産業 ⑥建設 ⑦造船・舶用工業 ⑧自動車整備 ⑨航空 ⑩宿泊 ⑪農業 ⑫漁業 ⑬飲食料品製造業 ⑭外食業

≪ 在留資格「特定技能2号」≫

①建設 ②造船・舶用工業

また二つの制度では在留期間にも違いがあります。

「技能実習制度」は在留資格”技能実習1号”の期間は1年・在留資格”技能実習2号”の期間は2年・在留資格”技能実習3号”の期間は2年。合わせると最長5年間となります。

「特定技能1号」は、在留期間の更新を繰り返して最長5年間ですが、「特定技能2号」は在留期間の更新を繰り返し、認められれば制限なく在留ができ、永住権の獲得を目指す事も可能です。

受入れ可能人数の違い

受入れ可能人数に関しても、各制度の目的の違いが反映されています。

「外国人技能実習制度」は“技術移転”を目的としていることから、受入れ企業の常勤職員数によって技能実習生の受入れ人数枠が決められており、かつ常勤職員数を超えないこととなっています。

「特定技能に係る制度」は“人手不足の解消”を目的としている事から、人数枠はありませんが、常勤職員数を超えないこととなっています。

技能実習生・特定技能生の違い

技能実習生・特定技能生の目線でポイントとなる二つの制度の違いを見てみましょう。

技能実習(団体監理型) 特定技能(1号)
関係法令 外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律/出入国管理及び難民認定法 出入国管理及び難民認定法
在留資格 在留資格「技能実習」 在留資格「特定技能」
在留期間 技能実習1号:1年以内,技能実習2号:2年以内,技能実習3号:2年以内(合計で最長5年) 通算5年
外国人の技能水準 なし 相当程度の知識又は経験が必要
入国時の試験 なし(介護職種のみ入国時N4レベルの日本語能力要件あり) 技能水準,日本語能力水準を試験等で確認(技能実習2号を良好に修了した者は試験等免除)
送出機関 外国政府の推薦又は認定を受けた機関 なし
監理団体 あり(非営利の事業協同組合等が実習実施者への監査その他の監理事業を行う。主務大臣による許可制) なし
支援機関 なし あり(個人又は団体が受入れ機関からの委託を受けて特定技能外国人に住居の確保その他の支援を行う。出入国在留管理庁による登録制)
外国人と受入れ機関のマッチング 通常監理団体と送出機関を通して行われる 受入れ機関が直接海外で採用活動を行い又は国内外のあっせん機関等を通じて採用することが可能
受入れ機関の人数枠 常勤職員の総数に応じた人数枠あり 人数枠なし(介護分野,建設分野を除く)
活動内容 技能実習計画に基づいて,講習を受け,及び技能等に係る業務に従事する活動(1号)
技能実習計画に基づいて技能等を要する業務に従事する活動(2号,3号)(非専門的・技術的分野)
相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する活動(専門的・技術的分野)
転籍・転職 原則不可。ただし,実習実施者の倒産等やむを得ない場合や,2号から3号への移行時は転籍可能 同一の業務区分内又は試験によりその技能水準の共通性が確認されている業務区分間において転職可能

〈出典〉出入国在留管理庁

1.技能水準

「特定技能に係る制度」では、相当程度の知識又は技能が必要です。

2.入国時試験の有無

「外国人技能実習制度」では入国時の試験はありません(介護職を除きます※介護職では、N4レベルの日本語能力が必要です)。

「特定技能に係る制度」では、技能水準と日本語能力水準を試験等で確認され、合格する必要があります。尚、技能実習2号を良好に修了している場合は、試験が免除されます。

3.転職の可否

「外国人技能実習制度」では原則転職が認められていません。

「特定技能に係る制度」では転職が可能です。

4.家族帯同の可否

「外国人技能実習制度」では家族の帯同は認められていません。

「特定技能に係る制度」では、特定技能1号では、家族帯同が認められていませんが、特定技能2号では家族帯同が認められています。

「監理団体」と「登録支援機関」の違いは?

監理団体とは
監理団体とは、技能実習制度で定められた監理事業を行う非営利の団体(事業協同組合や商工会議所等)です。主な活動内容として、受入れ企業(実習実施者)と技能実習生との間の雇用関係の成立のあっせんや、受入れ企業に対する指導、技能実習生からの相談対応などがあり、外国人技能実習制度に基づき、技能実習生受け入れ後の企業における適正な技能実習が遂行されているかの監理業務を実施します。

技能実習生の受け入れには、「企業単独型」と「団体監理型」の2つのタイプがあります。

「企業単独型」とは、日本の企業が海外の現地法人や合弁企業、取引先企業の常勤職員を直接受け入れるものであり、「団体監理型」は、監理団体が会員企業での技能実習をあっせんして適切な運営がなされるよう指導・監督を実施します。
登録支援機関とは
登録支援機関とは、「特定技能1号」の外国人を受け入れた企業(特定技能所属機関)から委託を受けて外国人の支援を行う、出入国管理局から認定を受け登録された機関のことです。なお、「特定技能2号」は登録支援機関の支援対象外です。

「特定技能」の外国人を雇用する企業は、外国人を職場上、日常生活上、社会上において支援する必要がありますが、その支援を登録支援機関に委託することが可能です。すべて受入れ企業でまかなうことも可能ですが、通常業務と並行しての外国人支援は非常に大変です。

受入れ企業又は登録支援機関が行う1号特定技能外国人への支援の内容は次のとおりです。

1号特定技能外国人に対する支援

監理団体の業務の目的とは?

監理団体の重要な役割として、外国人技能実習制度に基づいて、技能実習生受入後の企業で適正な実習が遂行されているかの監理業務があります。技能実習生が認定計画と異なる作業に従事していないか、受入れ企業が出入国又は労働に関する法令に違反していないかなどの事項について、監理責任者の指揮の下、3か月に1回以上の頻度で、企業に対して適切に行います。

また、現地の送り出し機関を選定し、受入れ企業に代わって求人の取り次ぎをする役割もあります。

受入れ企業は技能実習生受け入れ前に、技能実習制度に基づいて技能実習計画を作成し、外国人技能実習機構へ申請、認定を受けなければなりません。定められた多くの書類が必要となるため、煩雑になりがちな行程を監理団体サポートします。

技能実習生の受入れ企業側は、受け入れるにあたって社内整備など様々な準備が必要です。また、海外から来日する技能実習生も、慣れない日本での生活や就労に不安を抱えています。監理団体には、母国語で相談に乗れるよう体制を整えるなど、実りある実習を経て安全に技能実習生が帰国するまで受け入れ企業と技能実習生をサポートするという、大切な役割があります。

登録支援機関の業務の目的とは?

登録支援機関は、1号特定技能外国人の支援という業務目的のある重要な機関です。入国前のガイダンスの提供や意思疎通を図れる言語での相談苦情への対応など、特定技能生が安心して日本で働けるようにするために、登録支援機関はとても大きい存在です。

特定技能制度の特徴

  • 人手不足の解消
  • 即戦力となる労働力を維持できる
  • 技能技術のミスマッチが起こりにくい
  • 海外への進出が有利になる
  • 技能実習から継続して働いてもらえる

特定技能制度のその他特徴や条件

  • 転職が可能
  • 最長でも5年の雇用期間(建設、造船・舶用工業は特定技能2号への移行可能)
  • 日本語試験や技能評価試験が実施されている国とそうでない国がある
  • 協議会への加入が義務付けられている(有料の場合あり)